映画の素晴らしさ

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映画はトレンドではない

世の中には「流行りや廃り」というものがあります。それは「トレンド」という言葉で表されたりもします。私たちは不思議なもので、トレンドを意識する生き物です。

「トレンド」はある意味私たちの「社会性」の現れです。私たちは人と関わって生きています。人と関わることで社会に参加し、人と人の関わりが社会を作り上げているといってもいいでしょう。私たちのコミュニケーションが具現化したカタチが「社会」であるといってもいいのです。

そんな社会に参画していると、さまざまな価値観と接することになります。それらは人が持つ、目には見えないものです。「モノ」は見に見えて手に取ることができるかもしれません。ですが、それがどのような価値を持つのかというと、人と人が感じている「共通理解」なのです。「オシャレ」と感じたり「貴重である」と感じたりするのは、私たちの共通理解でしかないのです。さらに、それは時によって違うものです。常に流動するものです。

十数年前に一斉を風靡した「たまごっち」は、今ではそれ自体にそこまでプレミアを感じないのではないでしょうか。トレンドというものは一種の熱病のようなもので、今となっては「そんなものもあったな」ということで終わったりするものなのです。私たちは日々そのようなものに心を動かされたり、行動を左右されたりしているということです。そして、それらはどこからどのようなカタチで発生するのかわからないのです。

映画の制作は、そのような「トレンド」に乗ることが難しいものです。それは制作に何年も費やしたりするからです。むしろ、映画の場合はその映画の公開に合わせて世の中のムーブメントを起こすことがあります。それは巨額の予算を投じたプロモーションなどによって実現されます。私たちはそれらのムーブメントの数々を、身を持って知っているはずです。ただ、それらの中で確かなのは「流行に乗った映画」は後世に語り継がれないということです。むしろ作品で時代を切り開いた「エポックメイキング」であった作品の方が、世の中に残るのです。

代表例として「STAR WARS」があります。私たちが今持っている宇宙観、漠然とした宇宙時代のイメージを形作ることが出来た作品です。見たことはなくても名前は知っている、漠然とキャラクターは知っている、誰と話したとしてもそのキャラクターが共通語として通用する、そのような作品は確実に私たちの世の中に無くてはならないものとして刻みつけられた作品です。STAR WARSが巻き起こした宇宙ブームは人の夢を作り、その夢によって心を動かされた世代が、今の宇宙開発に関わっているという場合もあるほどです。

ブームに左右された作品ではなく、ブームを作る作品、そしてそのブームが社会を作るということこそが、「名作」である証です。私たちが結びついて形成されているこの「社会」は、カタチがあるようでないのです。「法律」でさえも、私たちの価値観を明文化したものにすぎません。人を動かす芸術は、時に時代をつくり上げることができるものなのです。私たちが心で動くということ、理屈だけでは説明できない「動機」が、誰にでもあるということ、だから映画が「面白い」と感じられるのです。

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